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報恩講に見る“感謝”のこころ──秋に営まれる仏教行事の多様性
秋は、仏教において“感謝”を表す行事が多く営まれる季節です。
収穫への感謝、教えへの報恩、祖師への敬意──それぞれの宗派が、独自のかたちで“感謝”のこころを表現しています。
報恩講とは(浄土真宗)
浄土真宗では、親鸞聖人の命日にちなみ「報恩講」が行われます。
“報恩”とは、教えに出会えたこと、生かされていることへの感謝を、念仏やふるまいで表す法要です。
報恩講の時期は、11月下旬が中心ですが、寺院や地域によって異なります。
雪深い地域では冬の交通事情を考慮して10月に前倒しされることもあり、門徒の都合に合わせて12月や年明けに行われる例もあります。
呼び方も「報恩講」のほか、「おとりこし」「ほんこさん」「御正忌」など、地域文化が反映されています。
こうした違いは、報恩講が単なる“行事”ではなく、門徒と寺院の関係性や暮らしに寄り添う“感謝の場”であることを物語っています。
他宗派の秋の行事紹介
報恩講以外にも、秋には各宗派で“感謝”を表す行事が営まれています。
- 浄土宗:十夜法要
阿弥陀仏への感謝と極楽往生を願い、十日十夜にわたって念仏を唱える法要。秋の収穫への感謝も込められています。 - 日蓮宗:御会式(おえしき)
日蓮聖人の命日にちなみ、万灯練り行列や法要が行われる。聖人の遺徳に感謝し、教えを受け継ぐ行事。 - 法相宗:慈恩会(じおんえ)
玄奘三蔵(慈恩大師)への報恩法要。『大般若経』の転読などを通じて、教えへの感謝を表す。 - 曹洞宗:瑩山禅師降誕会
曹洞宗の祖師・瑩山禅師の誕生を祝う法要。坐禅や法話を通じて、禅の精神と教えに感謝する。
共通する“感謝”のこころ
宗派は異なっても、そこに流れるのは“感謝”のこころです。
念仏、法話、供養、所作──それらはすべて、感謝の精神が形になったものです。
仏教の秋の行事は、宗派を超えて“感謝”を受け継ぐ文化のあらわれと言えるでしょう。
それは、声高に語られるものではなく、静かにふるまいに宿るもの。
季節の移ろいとともに、私たちもまた、感謝のこころを見つめ直す機会を得ているのかもしれません。








